出品者規約の作り方:出品の条件・説明の正確性・発送の責任・違反への措置

出品者規約は、出品者に何を約束させ、違反したときに何をするかを定める条項のまとまりです。出品条件、商品情報の正確性、発送、権利の保証、違反への措置の5つの柱を、義務と措置を一対にして組み立てます。

トップページ › 出品者規約の作り方:出品の条件・説明の正確性・発送の責任・違反への措置
出品者の義務は細かく書いてあるのに、違反したときの措置が「その他の必要な措置」の一文だけだと、運営者は軽い違反にも重い違反にも、同じ対応しかとれません。

このページの要点

  • 出品者規約は共通の利用規約と別に立て、出品者への周知だけで足りる変更を機動的に行えるようにする。
  • 出品できるものは、法令で禁止、許可が要る、運営のポリシーで制限の3分類。規約本文には大枠、詳細はガイドラインに置き、ガイドラインを規約の一部とする旨を書く。
  • 商品説明・価格・送料は、購入者に総額が伝わることを基準に書く。出品者が販売業者のときの特定商取引法の表示義務は出品者にかかり、運営者は表示の場を用意する。
  • 権利の保証と損害の負担は、違反と因果関係のある損害に結びつける。違反への措置は、軽微・中程度・重大の段階に分け、売上金の保留の範囲と手順を書く。

結論:出品者規約は、出品者に何を約束させ、違反したら何をするかを、条の単位で書く

出品者規約は、出品者に向けた約束事をまとめた条項のまとまりです。共通の利用規約が、サービス全体の入口と運営者の立場を定めるものだとすれば、出品者規約は、出品という行為そのものについて、出品者が守ることと、守らなかったときの運営者の対応を定めます。多くの規約で見られる傾向として、出品者向けの条項は、出品の条件、商品情報の正確性、発送、権利の保証、違反への措置の5つの柱で組み立てられます。この5つが、そろって書かれているか、互いに矛盾していないかが、出品者規約の質を決めます。

出品者規約で最も大切なのは、運営者が出品者に求める内容と、運営者が出品者に対して行える措置の範囲が、対応していることです。たとえば、発送の期限を出品者の義務として定めたのに、期限を過ぎたときの措置が書かれていなければ、運営者は動けません。逆に、措置だけが詳細で、出品者の義務が抽象的なままだと、どの行為が違反に当たるのかが争いになります。義務と措置を、一対にして書くのが基本です。

  • 出品者規約は、共通の利用規約とは別のまとまりとして立て、出品者という立場に固有の約束だけを書く。
  • 出品できるものは、法令で禁止されるもの、許可が要るもの、運営のポリシーで制限するものの3分類で整理し、規約本文には大枠、詳細はガイドラインに置く。
  • 商品説明・価格・在庫・送料の正確性は、購入者に総額が伝わることを基準に書く。出品者が事業者の場合は、特定商取引法の表示の義務が出品者にかかる。
  • 発送の期限、追跡情報の提供、不着のときの調査への協力は、出品者の義務として具体的に書く。
  • 出品者の権利の保証と、権利侵害があったときの出品者の負担を書き、違反への措置は、重さに応じた段階に分ける。

このページは、出品者向けの条項を組み立てる視点に絞ります。購入者側の条項は購入者規約の作り方、配送事故と返品・返金は不着・破損・説明と違う商品、手数料は手数料の設計のページで扱います。

出品者規約は、共通の利用規約と別に立てる

出品者に関する条項を共通の利用規約の中に混ぜると、二つの問題が起きます。一つは、購入者だけの利用者が、出品者の義務や出品者への措置まで読むことになり、読みにくくなることです。もう一つは、出品者規約を変更したいときに、共通の利用規約全体の変更の手続(民法548条の4の周知など)を踏まなければならなくなることです。出品者に関する条項を別のまとまりにしておけば、出品者にだけ周知すれば足りる変更を、機動的に行えます。

共通の利用規約には、サービスの内容、登録、運営者の立場、禁止行為、運営者の免責、規約の変更、準拠法などの、すべての利用者に共通の条項を置きます。出品者規約は、出品者になる利用者が、出品を始める前に追加で同意する形にするのが、実務では一般的です。出品者になる登録の画面や、最初の出品の画面で、出品者規約を表示して同意を得れば、出品者だけに適用される約束になります。共通の利用規約に、「出品者は、別に定める出品者規約にも従う」「両者に食い違いがあるときは、出品者規約を優先する」という優先関係の条項を置くことも、忘れないようにします。

出品者規約が結ぶ関係と、規約が定める事項

運営者出品者規約の作成者。出品者に向けた約束を示し、違反に措置を行う
出品者出品者規約に同意し、商品を売る。購入者との売買契約の売主
購入者出品者規約の当事者ではないが、出品者の義務の履行を受ける立場
  • 運営者出品者出品の条件、説明の正確性、発送の義務、権利の保証、違反への措置の約束
  • 出品者購入者売買契約に基づく商品の引渡し、契約の内容に適合した履行
  • 購入者運営者不着や説明と違う商品の申出、通報
  • 運営者出品者申出の調査への協力の要請、出品の削除・停止、売上金の保留

購入者は、出品者規約の当事者ではありません。出品者の義務が、売買契約の内容として購入者に対して果たされるかどうかは、出品者と購入者の売買契約の問題です。出品者規約は、運営者と出品者の間の約束として、その履行を後押しする役割を持ちます。

出品者が個人か事業者かは、出品者規約の書き方に影響します。出品者が事業として出品する場合、特定商取引法の通信販売の規定(2条2項、11条、12条、12条の6)が出品者にかかります。個人が不用品を出品する場合は、これらの規定の適用が問題にならない場面もあります。出品者の区分と表示欄の設計は出品者の区分と表示欄の設計のページで扱い、本ページでは、どちらの出品者にも共通する約束を中心に書きます。

出品条件の分け方:規約本文には大枠、詳細はガイドラインに

出品の条件は、出品者規約の最初の柱です。性質の違うものを一つの列挙にまとめると判断の基準がぼやけるため、法令で禁止されるもの、許可・資格が要るもの、運営のポリシーで制限するものの3つに分けて、規約本文には大枠を書き、詳細はガイドラインに置きます。分類の作り方、判断の例、迷う出品の確認手順は、禁止出品物ガイドラインの作り方のページで詳しく扱います。

出品者規約の側で押さえるのは、ガイドラインを規約の一部として扱う旨と、ガイドラインを変更するときの周知の方法を、規約本文に書いておくことです。委ねっぱなしにすると、ガイドラインの変更が規約の変更として有効に行われたのかが争いになります。「その他、運営者が不適切と判断したもの」と一文で終わらせる書き方も、措置の理由が争われやすいため、判断の基準をガイドラインに具体的に書きます。

書き方の例(一般的な例) 出品条件の条文

出品できないもの

よくある書き方出品者は、法令に違反するもの、公序良俗に反するもの、その他運営者が不適切と判断するものを出品してはならない。
整えた書き方出品者は、次の各号のいずれかに当たるものを出品してはならない。(1)法令により販売または譲渡が禁止されているもの (2)許可または資格が必要であるのに、これを受けていないもの (3)運営者がガイドラインで出品を認めないものとして定めたもの。ガイドラインは、本規約の一部とし、変更するときは、変更の旨と効力発生日を出品者に周知する。

理由3分類に分け、ガイドラインを規約の一部とする旨と変更時の周知を書くと、規約とガイドラインの関係が明確になる。

出品前の確認

よくある書き方出品者は、出品するものが適法であることを確認する。
整えた書き方出品者は、出品の前に、出品するものが前項の各号に当たらないことを確認し、許可または資格が必要なものについては、運営者の求めに応じて、その許可番号または資格を証する情報を提供する。

理由確認の内容と、運営者が求めたときの提供義務を書くと、運営者が確認を求める根拠になる。

商品説明・価格・在庫・送料:購入者に総額が伝わることを基準にする

出品者規約の中で、購入者とのトラブルに直結するのが、商品情報の正確性です。商品の状態、傷や使用感、付属品、サイズ、価格、送料、在庫、発送までの日数といった情報は、売買契約の内容の一部を構成します。民法562条1項は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないときに、買主が追完を請求できると定めています。何が契約の内容かは、商品の説明によって決まるため、説明が不正確であれば、そのまま出品者の責任につながります。

規約には、商品情報を「正確かつ誤解を招かない方法で記載すること」を出品者の義務として書きます。そのうえで、運営者が出品者に求める具体的な記載項目(商品の状態の区分、傷や汚れの有無、付属品の有無、サイズ、使用期間など)をガイドラインに置き、出品の入力画面の必須項目にすると、規約と画面が一致します。入力画面で必須にした項目は、規約の義務とも対応させておくと、記載漏れが違反としてとらえやすくなります。

価格と送料の表示では、購入者が最終的に支払う総額が、購入手続の前に分かることが大切です。出品者が販売業者に当たる場合は、特定商取引法11条1号が、販売価格(販売価格に送料が含まれない場合は、販売価格と送料)の表示を求めています。また、同法12条は、商品の性能やその申込みの撤回・解除に関する事項などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止しています。事業者が行う表示については、景品表示法5条が、品質などについて実際のものよりも著しく優良であると示す表示(同条1号)や、取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認される表示(同条2号)を禁止しています。いずれも、出品者が事業者である場合の話であり、義務を負うのは出品者です。運営者は、出品者がこれらの表示を適切に行えるよう、入力欄と表示欄を用意し、規約で出品者に表示の適正を求める立場にあります。

条文例商品情報の正確性(書き方の例)

  1. 出品者は、商品の名称、状態、傷や汚れの有無、付属品、サイズ、数量、販売価格、送料、発送までの日数その他購入者の判断に必要な情報を、正確かつ誤解を招かない方法で記載しなければならない。
  2. 出品者は、販売価格と送料を、購入者が購入手続を行う前に、総額として理解できる方法で表示しなければならない。購入者向けに示す価格は、消費税を含む総額で表示する。
  3. 出品者は、在庫のない商品を出品してはならず、在庫の状況に変更があったときは、速やかに出品の情報を更新しなければならない。
  4. 出品者が前三項の義務に違反したことにより購入者に損害が生じたときは、出品者が購入者に対して責任を負う。

お客様向けの価格は消費税を含む総額で示すこと(消費税法63条。免税事業者を除く)にとどめ、税の取扱いそのものは規約に書きません。表示欄の項目は、規約の義務と画面の必須項目で対応させます。

在庫の正確性は、複数の購入者が同時に購入手続を進める場面で問題になります。出品者が在庫を1点しか持たないのに、複数の購入申込みが成立してしまうと、出品者は一部の購入者に履行できません。売買契約が成立しているのに履行できない場合は、債務不履行の問題になります(民法415条)。出品者規約では、出品者が在庫を超える出品をしないこと、在庫がなくなったときの取下げの手順、同時購入のときの扱い(先に決済が承認された購入者を優先する、など)を、購入者規約と合わせて書きます。成立の時点をどこに置くかは、購入者規約のページで整理します。

確認の問いと理由商品情報の正確性を確かめる問い

  1. 出品の入力画面は、規約に書いた記載項目を、必須項目として含んでいるか。

    規約の義務と画面の入力欄がずれると、記載漏れを違反として扱う根拠が弱くなる。

  2. 総額(価格+送料)は、購入手続の前の画面で表示されるか。

    購入者が購入手続の最終段階で初めて送料を知る設計は、誤認の指摘を受けやすい。

  3. 事業者の出品者に、特定商取引法の表示を入力させる欄があるか。

    出品者が販売業者に当たる場合、表示の義務は出品者にかかる。運営者は表示の場を用意する。

  4. 商品の状態の区分(新品、未使用に近い、使用感あり、など)の定義が、ガイドラインに書かれているか。

    区分の意味が出品者ごとに違うと、「説明と違う」という申出の基準が定まらない。

発送の期限、追跡情報、不着のときの調査協力を出品者の義務にする

売買契約が成立したら、出品者は商品を購入者に引き渡す義務を負います。引渡しの期限、方法、費用の負担は、本来は出品者と購入者の間の契約の内容ですが、出品者規約で、出品者が運営者に対して約束する共通の基準を定めておくことが、サービス全体の信頼性につながります。基準がなければ、出品者によって発送の速さがまちまちになり、購入者の不満は運営者に向かいます。

発送の期限は、「購入手続の完了から一定の日数以内に発送する」「出品時に出品者が設定した日数以内に発送し、その日数は運営者が定める上限を超えない」といった形で書きます。債務の履行に確定期限があるときは、債務者は期限の到来した時から遅滞の責任を負います(民法412条1項)。期限を過ぎても発送されない場合、購入者は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ、契約を解除できます(民法541条)。出品者が発送しない意思を明確に表示したときなどは、催告なしの解除も可能です(民法542条)。規約では、期限を過ぎたときに、購入者が取引のキャンセルを申し出られること、運営者が売買契約の解除を前提に代金を返す手順を取ること、出品者に措置を行うことを、段階的に書いておくと、運営者の動きが明確になります。

発送の遅れから不着の調査までの流れ(規約に書く順)

  1. 発送の期限出品者は、定めた期限までに商品を発送する。期限の延長は、購入者に連絡し、了承を得る。
  2. 追跡情報の提供追跡可能な方法で発送し、発送後は、追跡番号などの情報を購入者が確認できる方法で提供する。
  3. 期限の超過期限を過ぎても発送されない場合、購入者は、運営者を通じて発送の確認を求められる。運営者は、出品者に状況を照会する。
  4. 不着の申出商品が届かない場合、購入者は、一定の期間を経過した後、運営者に申し出られる。出品者は、運営者の求めに応じて、配送業者への調査の依頼、発送の記録の提供に協力する。
  5. 調査の結果調査の結果、商品が配送中に失われたと確認されたとき、または出品者が発送していなかったとき、売買契約は解除されたものとし、代金は購入者に返される。出品者は、この解除に従う。

各段階の期間は、サービスの運用に合わせて「一定の期間」として設計します。購入者規約と返品・返金の定めに書く期間と、そろえておきます。

追跡情報の提供は、不着の紛争を減らす手立てとして重要です。追跡できない方法で発送した場合、出品者が発送したことを示す資料が乏しくなり、購入者が届いていないと申し出たときに、事実の確認が難しくなります。規約では、追跡可能な配送方法を原則とし、追跡できない方法を認める場合は、不着のリスクを出品者が負う旨を、あらかじめ書いておく方法があります。配送中に商品が滅失した場合に誰が危険を負うかは、配送事故と返品・返金のページで、民法の規定をもとに整理します。

不着の調査への協力を、出品者の義務として書く理由は、運営者が調査できる情報の多くが、出品者の手元にあるからです。配送業者への照会、発送時の控え、梱包の写真などは、出品者しか持っていないことが多くあります。調査への協力に応じない出品者に対する措置(出品の停止、売上金の保留など)も、あわせて書いておくと、運営者が調査を進められます。

出品者の権利の保証と、権利侵害があったときの負担

出品者は、商品を売る以上、その商品を売る権利を持っている必要があります。他人の物を勝手に出品したり、他人の商標や著作物を侵害する商品を出品したりすれば、購入者や権利者に損害が生じます。出品者規約では、出品者が、出品する商品について、販売に必要なすべての権利を有していることを保証する旨を書きます。

民法561条は、他人の権利を売買の目的としたときは、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負う、と定めています。また、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないときは、買主の追完請求や代金減額請求、損害賠償請求、解除などの規定が準用されます(民法565条)。つまり、権利の面で問題のある商品を売った出品者は、民法上も購入者に対して責任を負います。規約で出品者に権利の保証を求めるのは、この責任を前提に、運営者との関係でも保証の内容を明確にするためです。

権利侵害があったときの負担については、出品者が、権利者や購入者に生じた損害を賠償し、運営者が権利者や購入者から請求を受けた場合には、出品者が運営者に生じた合理的な範囲の損害を補償する、という書き方が一般的です。運営者が権利者から請求を受けた場面は、権利者の申告窓口の運用と一体で考える必要があります。これらの運用は、模倣品・権利侵害の出品への対応方針のページで整理します。

書き方の例(一般的な例) 権利の保証と負担の条文

保証の範囲

よくある書き方出品者は、出品する商品が適法であることを保証する。
整えた書き方出品者は、出品する商品について、販売に必要なすべての権利を有していること、第三者の著作権、商標権、肖像権その他の権利を侵害しないこと、および前条各号に当たらないことを保証する。

理由保証する事項を具体的に列挙すると、保証に違反したかどうかの判断が容易になる。

損害の負担

よくある書き方出品者は、本サービスの利用により生じた一切の損害を賠償する。
整えた書き方出品者が前条の保証に違反したことにより、購入者、第三者または運営者に損害が生じたときは、出品者は、その損害(運営者が負担した合理的な範囲の費用を含む)を賠償する。

理由「一切の損害」は範囲が不明確で、出品者が個人の消費者の場合は、消費者契約法10条の評価を受けるおそれがある。違反と因果関係のある損害に結びつける。

運営者への請求

よくある書き方第三者から運営者に請求があったときは、出品者がこれを解決する。
整えた書き方第三者から運営者に請求または申立てがあったときは、出品者は、運営者の求めに応じて必要な資料を提供し、運営者と協力してこれに対応する。運営者に生じた損害は、前項により出品者が負担する。

理由「解決する」と書くだけでは、運営者が自ら対応する場面で根拠が薄い。協力義務と損害の負担を分けて書く。

出品者が個人の消費者に当たる場合、運営者との間の出品者規約は、消費者契約になり得ます。出品者が消費者の場合、出品者に過大な義務を課す条項は、消費者契約法10条の対象になり得ます(同条は、消費者の義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とします)。出品者に求める保証と負担は、出品者が通常の注意で確かめられる範囲に限り、運営者が自ら点検できることまで出品者に負わせない書き方が、バランスのとれた設計です。

違反への措置:重さに応じて段階に分ける

出品者規約の最後の柱は、違反があったときに運営者が何をするかです。「違反があったときは、運営者は、アカウントの停止、登録の取消し、その他の必要な措置をとることができる」と一文で書く規約は多く見られますが、措置が重さに関係なく一律だと、出品者にとって予測がつかず、運営者にとっても、軽微な違反に重い措置をとってしまい、争いになるおそれがあります。違反の重さに応じて、措置を段階に分けて書くのが、実務では整った設計です。

違反の重さと措置の段階(書き方の例)

段階違反の例措置の例規約に書くこと
軽微記載の不備、説明の不足、期限のわずかな超過注意・是正の依頼、出品の修正の依頼是正を求める方法と、是正の猶予
中程度説明と違う商品の出品の繰り返し、発送の遅延の繰り返し、調査への非協力出品の削除、一定期間の出品停止、評価への注意表示停止の期間と、解除の条件
重大禁止出品物の出品、偽造品の出品、購入者を欺く行為、不正な手段での売上金の取得アカウントの停止・登録の取消し、売上金の保留、関係機関への通報保留する範囲と期間、保留を解く条件、記録の保存

措置の中でも、売上金の保留は、出品者への影響が大きく、争いになりやすいものです。売上金の保留や、損害額の控除は、民法の相殺(505条)の考え方と関わります。相殺は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときに、対当額で債務を免れるものです。規約で、出品者に違反があって運営者が損害を受けたときに、売上金から控除できると書く場合は、控除できる損害の範囲、控除する前の通知、出品者が異議を述べる方法を、あわせて書いておくと、出品者にとって予測可能になります。

措置をとる理由の開示も、検討が要る論点です。「運営者は、措置の理由を開示する義務を負わない」と書く例が多くあります。セキュリティ上の理由や、通報者の保護のために、すべての詳細を開示できない場面はありますが、一律に理由を一切示さないとする書き方は、利用者の納得を得にくく、とくに出品者が消費者に当たる場合は、消費者契約法10条の評価を受けるおそれがあります。措置の種類と、違反した条項、是正の方法を通知し、通報者の特定や不正検知の仕組みなど、開示できない事項を除く旨を書く設計が、実務では使われています。

違反への措置の条項を点検するリスト

  • 措置の段階(注意、削除、停止、登録取消し、売上金の保留)を分けて書き、それぞれの要件を書いた。
  • 措置の前に、出品者に反論の機会を設けるか、緊急の場合に先に措置をとれるかを決め、書いた。
  • 売上金の保留と控除の範囲、通知の方法、解除の条件を書いた。
  • 措置の通知に含める内容(違反した条項、是正の方法)と、開示しない事項を書いた。
  • 措置が誤っていたと分かったときの回復の手順(出品の復活、保留の解除)を決めた。

起きがちなこと:義務と措置の対応がとれていない出品者規約

最後に、出品者規約で起きがちなことを、型としてまとめます。いずれも、特定のサービスの話ではなく、出品者向けの規約を点検する場面で、よく見られる傾向です。

起きがちなこと

  • 出品者の義務は細かく書いてあるのに、違反したときの措置が「その他の必要な措置」の一文だけで、軽い違反と重い違反の区別がない。
  • 出品できないものを一つの列挙にまとめ、法令違反、許可が必要なもの、運営のポリシーの制限が混ざり、判断の基準が不明確になる。
  • 商品情報の正確性を規約に書いたのに、出品の入力画面にその項目がなく、記載漏れを違反として扱う根拠が弱い。
  • 総額の表示を求める規約があるのに、送料が購入手続の最後まで表示されない設計になっている。
  • 出品者に「一切の損害」を賠償させる条項を置き、出品者が個人の場合に、過大な義務として評価される。
  • 売上金の保留や控除を広く認める条項があるのに、控除の範囲、通知、異議の方法が書かれていない。
  • 措置の理由を一律に開示しないと書き、誤った措置のとき、出品者が是正する方法がない。
  • 出品者規約を共通の利用規約に混ぜたため、出品者だけに関わる変更をするたびに、全利用者への周知が必要になる。

出品者規約を整えたら、購入者規約と突き合わせます。出品者の発送の義務と、購入者のキャンセルや不着の申出が、同じ期間と手順でつながっているか、手数料や売上金の定めが、措置の条項と矛盾していないかを確かめます。

よくあるご質問

出品者規約は、共通の利用規約と別に作る必要がありますか。

必須ではありませんが、別にしておくと便利です。共通の利用規約にすべてを入れると、購入者だけの利用者に出品者の義務まで読ませることになり、出品者に関する変更でも全利用者への周知が必要になります。出品者になる登録や最初の出品の画面で出品者規約への同意を得る設計にし、共通の利用規約に、両者の優先関係を書いておくのが一般的です。

出品を禁止するものは、規約本文にすべて列挙すべきですか。

大枠を規約本文に書き、詳細はガイドラインに置くのが整った設計です。法令で禁止されるもの、許可や資格が要るもの、運営のポリシーで制限するものの3分類で整理し、ガイドラインを規約の一部とする旨と、ガイドラインを変更するときの周知の方法を、規約本文に書きます。法令の改正や新しい問題に、ガイドラインの更新で対応できます。

出品者が個人事業主の場合、特定商取引法の表示は誰が出しますか。

通信販売の広告の表示(特定商取引法11条)の義務は、販売業者に当たる出品者にかかります。運営者は、出品者に表示させる入力欄と表示欄を用意し、規約で出品者に正確な表示を求める立場にあります。出品者が販売業者に当たるかは、取引の態様で判断されるため、条文と消費者庁の公表資料で確認が必要です。

出品者に「一切の損害を賠償する」と書くのは問題ですか。

範囲が不明確で、争いになりやすい書き方です。出品者が個人の消費者に当たる場合は、消費者の義務を加重する条項として、消費者契約法10条の評価を受けるおそれがあります。出品者の保証に違反したことと因果関係のある損害に結びつけ、運営者が負担した合理的な範囲の費用に限るなど、範囲を明らかにする書き方が整っています。

違反した出品者の売上金を保留してよいですか。

規約に根拠があり、範囲と手順が明らかであれば、保留すること自体は可能です。保留や損害額の控除は、相殺(民法505条)の考え方と関わるため、控除できる損害の範囲、通知の方法、異議を述べる方法、保留を解く条件を、規約に書いておきます。広すぎる保留の条項は、出品者との争いの原因になります。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別のサービスへの当てはめは、取引の仕組みや利用者との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 金融庁 / 警察庁 / 経済産業省

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

詳しい内容を見る

フリマ・マッチング・投稿サービスの規約でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「フリマ・マッチング・投稿サービスの規約ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成・点検だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る