このページの要点
- 配送中の事故は、引渡しの前なら原則として出品者の負担(民法412条の2、536条1項、542条1項1号)、引渡しの後は購入者の負担(567条1項)。運送業者に預けた時を引渡しとする書き方には限界がある。
- 受取確認と自動確認は代金確定の手続であり、契約不適合の権利を放棄する意思表示ではないと明記する。契約不適合は、知った時から1年以内の通知で追及できる(民法566条)。
- 「受領後一定期間内に申出がなければ責任を負わない」は、購入者が消費者のとき消費者契約法8条・10条、事業者間では商法526条を意識して書き分ける。
- 返品を出品者任せにして「記載がなければ返品不可」とみなす書き方は、出品者が販売業者のとき特定商取引法15条の3との関係を確かめる。返送費用は不適合は出品者、都合返品は購入者と分ける。
結論:配送事故と、説明と違う商品は別の問題。運営者が決める枠組みは、手順と期間とお金の流れ
商品が届かない、壊れて届いた、説明と違う。利用者間の取引で、運営者に最も多く寄せられる申出がこの三つです。同じ「商品に問題がある」という訴えに見えますが、法的な整理は別々です。届かない、壊れて届いたという配送の問題は、民法の危険負担と履行不能の考え方で整理します。説明と違うという問題は、売主の契約不適合責任(民法562条以下)で整理します。この二つを混ぜた条項は、読み手にも運営者にも判断の基準が分からなくなります。
運営者が規約で決められること、決めるべきことは、売買契約そのものの中身ではなく、その周りの枠組みです。申出を受け付ける窓口と期間、運営者が調べる範囲、返金の経路、出品者が応じないときの運営者の動きです。売買契約の当事者は出品者と購入者であり、返品を認めるか、交換にするか、返金にするかを決める権利と責任は、第一次的には出品者にあります。運営者は、その手続を滞りなく進めるための枠組みを整えます。
- 配送中の紛失・破損は、引渡しの前か後かで扱いが変わる(民法567条1項、536条1項)。規約で運送業者に預けた時を引渡しとみなす書き方には、購入者が消費者のときの限界がある。
- 受取確認の操作と、一定期間での自動確認は、代金を確定する手続であり、契約不適合の責任を免除する意思表示ではないと明記する。
- 説明と違う商品は、買主の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除ができ(民法562条〜564条)、買主が不適合を知った時から1年以内の通知が要る(民法566条)。
- 「受領後一定期間内に申出がなければ責任を負わない」とする書き方は、購入者が消費者の場合、消費者契約法8条・10条の評価が要る。事業者間の売買では商法526条も意識する。
- 返品・返金を出品者任せにして、記載がなければ返品不可とみなす書き方は、出品者が販売業者のとき、特定商取引法15条の3との関係を確かめる。
このページは、運営者が規約で決める返品・返金の枠組みに絞ります。購入前のキャンセルは購入者規約のページ、出品者の発送の義務は出品者規約のページ、手数料の戻し方は手数料の設計のページで扱います。売買契約書そのものの書き方は、別のガイドの範囲です。
配送中の紛失・破損:引渡しの前か後かで、誰が負担するかが分かれる
商品が配送中に紛失した、破損した場合、購入者は代金を支払ったのに商品を受け取れず、出品者は商品を失ったうえ代金を受け取れるのか、という問題になります。民法の基本的な考え方は、商品が買主に引き渡されたかどうかで分かれます。
民法567条1項は、売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後に、目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、または損傷したときは、買主は、その滅失または損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができず、代金の支払を拒むこともできない、と定めています。引渡しの後の事故は、買主の負担になる、という考え方です。
反対に、引渡しの前に、当事者双方の責めに帰することができない事由(たとえば配送業者の事故)で商品が失われ、出品者が商品を引き渡せなくなったときは、債務の履行が不能になります(民法412条の2第1項)。この場合、債権者である購入者は、反対給付である代金の支払を拒むことができ(民法536条1項)、また契約の解除もできます(民法542条1項1号)。すでに代金を支払っているなら、解除による原状回復として、返金を求められます。つまり、引渡しの前の事故は、売主である出品者の負担になります。
配送事故の場面と、民法の考え方・規約で決めること
| 場面 | 民法の考え方 | 規約で決めること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 発送前に商品が失われた | 履行不能。購入者は代金の支払を拒め、契約を解除できる(412条の2、536条1項、542条1項1号) | 出品者が発送できないときの解除と返金の手順 | 出品者が在庫を持たないまま出品した場合は、出品者規約の違反にもなる |
| 配送中に紛失した | 購入者に引き渡される前の事故。原則として出品者の負担となる | 不着の申出の期間、調査の手順、解除と返金 | 運送業者に預けた時を引渡しとみなす特約の有無で、扱いが変わる |
| 配送中に破損した | 引渡しの前なら、原則として出品者の負担。引渡しの後の破損は購入者の負担(567条1項) | 破損の申出の期間、写真など証拠の提出、交換・返金の手順 | 梱包の不十分さが原因なら、出品者の債務不履行(415条)の問題になり得る |
| 受け取った後に破損に気づいた | 配送の事故か、元からの不具合か、使用による破損かの切り分けが必要 | 申出の期間、証拠、原因の確認の手順 | 契約不適合(元からの不具合)の問題か、引渡し後の事故かで扱いが変わる |
| 購入者の不在などで受け取れなかった | 購入者の側の事情。再配達や保管の費用は購入者の負担となり得る(413条2項) | 再配達の費用、保管期間、返送された商品の扱い | 購入者が受領を拒み続けるときの売買契約の扱いを決める |
規約では、運送業者に商品を預けた時に、引渡しがあったものとみなす、と書く例が見られます。出品者から見れば、発送した以上、その後の事故の責任を負いたくないという意図ですが、購入者から見れば、手元に届かない商品の代金を払い続けることになり、不利益が大きい条項です。購入者が消費者の場合、消費者の義務を加重し、信義則に反して一方的に利益を害する条項は、消費者契約法10条により無効となります。また、定型約款として購入者に示す条項であれば、民法548条の2第2項の規律も受けます。
したがって、運営者が購入者規約に置く条項は、配送中の事故のリスクを購入者に負わせる書き方ではなく、「商品が購入者に届くまでの間の事故は、出品者の負担とする」「ただし、購入者の責めに帰すべき事由で受領できなかった場合を除く」といった書き方が、バランスのとれたものです。運営者が配送中の事故について責任を負わないという条項も、出品者と購入者の間の責任の分担と、運営者自身の責任を区別して書きます。運営者が責任を負わないと書けるのは、運営者自身の責任であり、出品者の責任を購入者に押しつける書き方は、別の問題です。
書き方の例(一般的な例) 配送事故の条文
危険の移転
理由運送業者に預けた時に危険が移る書き方は、購入者が消費者のときに消費者契約法10条の評価を受けやすい。引渡しの時を軸に書く。
不着の申出
理由申出ができる時期と方法、出品者の協力義務を書く。「速やかに」だけでは、時期の基準がない。
解除と返金
理由返金が行われる条件と経路を、運営者の判断ではなく、調査の結果という客観的な基準に結びつける。
受取確認と代金確定:受取の操作は、品質の責任を免除するものではない
多くのサービスでは、購入者が商品を受け取った後に「受取確認」の操作を行い、その時点で出品者の売上金が確定する仕組みがとられています。購入者が操作しない場合は、商品が配送完了となってから一定の日数が経つと、自動的に確認がされたものとして扱う設計も一般的です。この仕組みは、購入者が代金を支払う決済と、出品者が売上金を受け取る精算の間にある、代金の確定の手順にあたります。
受取確認の仕組みで注意すべきは、受取確認の操作の法的な意味を規約に明記することです。受取確認は、商品が届いたことを運営者に知らせて、代金を出品者に確定させるための手続です。ところが、購入者がこの操作をすると、商品の品質に問題があっても、もう申出ができなくなる、と読める規約があります。契約不適合の責任は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知すれば追及でき(民法566条)、その期間内の通知によって履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除ができます。受取確認の操作を理由に、この権利を購入者から奪う書き方は、購入者が消費者のときに、消費者契約法10条の評価を受けます。
受取確認から代金確定までの流れと、規約に書くこと
- 配送完了追跡情報などで、商品が購入者の手元に届いたと確認できる時点を、配送完了とする。確認の方法を書く。
- 受取確認の依頼購入者に、商品の内容を確認し、受取確認の操作を行うよう通知する。商品に問題があるときは、操作の前に申出をするよう案内する。
- 購入者の受取確認購入者が受取確認の操作を行うと、出品者の売上金が確定する。操作は、品質に関する権利の放棄ではない旨を書く。
- 自動確認一定の日数を経過しても購入者の操作がなく、申出もないときは、受取確認がされたものとして扱う。申出があるときは、自動確認は行わず、調査が終わるまで保留する。
- 代金の確定受取確認または自動確認の後、売上金を出品者に確定させる。確定後も、契約不適合の責任と返金の手続は、別に定める期間内は可能とする。
自動確認の日数は、配送の実情に合わせて「一定の日数」として設計します。保留する期間と、確定後の返金の手順は、手数料と精算の定めと整合させます。
受取確認の自動化は、出品者にとっては売上金の確定が早まる利点がありますが、購入者にとっては、商品を確認する前に代金が確定する不安があります。申出があった場合の自動確認の停止、確定後も一定の期間は申出を受け付けること、確定後の返金の原資をどう確保するか(出品者の以後の売上金からの控除、など)を、あらかじめ決めておきます。売上金の控除は、相殺の考え方と関わるため、控除できる範囲と手順を、手数料と精算の定めに書きます。
説明と違う商品:売主の契約不適合責任と、期間の制限
商品が届いたものの、説明と違う、不具合がある、傷や汚れの記載がなかった、という場面は、民法の契約不適合責任の問題です。民法562条1項は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる、と定めています。売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で追完することもできます。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完の請求はできません(同条2項)。
追完がされないときは、買主は、相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がなければ、不適合の程度に応じた代金の減額を請求できます(民法563条1項)。追完が不能なとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告なしに直ちに代金の減額を請求できます(同条2項)。さらに、これらの規定は、債務不履行による損害賠償の請求(民法415条)と、契約の解除(民法541条、542条)を妨げません(民法564条)。つまり、買主は、状況に応じて、追完、代金減額、損害賠償、解除のどれを選ぶこともできます。
契約不適合のときの買主の権利と、運営者の枠組みに落とすこと
| 買主の権利 | 条文 | 内容 | 規約・運用に落とすこと |
|---|---|---|---|
| 追完請求 | 民法562条 | 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し。売主は、不相当な負担でなければ、別の方法でもできる | 交換・修理・一部返金など、出品者が選べる対応の範囲 |
| 代金減額請求 | 民法563条 | 追完の催告をしても追完がないとき等に、不適合の程度に応じて減額 | 一部返金の手順。減額の割合は当事者の協議 |
| 損害賠償請求・解除 | 民法564条、415条、541条、542条 | 追完や減額とは別に、損害賠償と解除ができる | 全額返金(解除)の手順と、返品の送料の扱い |
| 期間の制限 | 民法566条 | 買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、これらの権利を失う。売主が引渡しの時に悪意・重過失のときを除く | 申出の期間を規約で短く定めすぎない。期間の起算点を明確に書く |
| 権利の不適合 | 民法561条、565条 | 他人の権利の売買、移転した権利が契約の内容に適合しない場合にも、同様の規定が準用 | 権利侵害の商品の扱いは、別のページ(模倣品・権利侵害)に送る |
これらの権利は、売買契約の当事者である購入者が、出品者に対して持つ権利です。運営者が規約で決めるのは、その権利を行使しやすい窓口と手順と、運営者が補助する範囲です。たとえば、購入者が「説明と違う」と申し出たときに、運営者は、申出の窓口を設け、写真などの資料の提出を求め、出品者に対応を促し、出品者の対応を取引の記録に残します。出品者が追完や返金に応じない場合は、運営者が、出品者に対して、出品者規約に基づく措置を行う、あるいは、購入者に対して、売買契約の当事者として出品者に請求できることを伝える、といった対応が考えられます。
確認の問いと理由説明と違う商品の申出を受けたときの確認の問い
商品の説明のどの部分と、実際の商品のどこが違うか、写真などで確認できるか。
何が契約の内容で、何が不適合かは、説明の記載で決まる。説明の記載を残しておくことが、判断の出発点になる。
購入者が不適合に気づいたのはいつか。その時から1年以内の通知か。
民法566条は、不適合を知った時から1年以内の通知を求める。実際には、規約に定めた申出の期間のほうが短い場合が多い。
不適合は、購入者の責めに帰すべき事由(使用による損耗など)ではないか。
民法562条2項は、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完請求ができないとする。
出品者は、不適合を知りながら告げなかったのではないか。
売主が知りながら告げなかった事実は、担保責任を負わない特約をしても免れない(民法572条)。
出品者が個人で、使用済みの中古品であることが説明されているか。
中古品は、使用による状態の差が契約の内容に含まれる。状態の区分の定義が、判断の基準になる。
「受領後一定期間内に申出がなければ責任を負わない」とする書き方の限界
出品者向けの規約や購入者向けの規約には、「購入者が商品の受領後、一定の期間内に異議を申し立てなかったときは、出品者は、商品の品質や不具合について責任を負わない」と書く例が、多くの規約で見られる傾向として、あります。出品者を保護し、取引を早期に確定させる意図ですが、この条項は、購入者が誰か、出品者が誰かによって、有効性の評価が大きく変わります。
出品者が事業として出品する場合は、出品者は事業者で、購入者が個人であれば、売買契約は消費者契約です。消費者契約法8条1項は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項(1号)や、故意・重大な過失による債務不履行について責任の一部を免除する条項(2号)を、無効としています。同条2項は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合の責任を免除する条項について、事業者が履行の追完または代金減額の責任を負うこととされているときなどは、同条1項を適用しないと定めています。ただし、追完も代金減額も認めないまま、期間の経過だけで一切の責任を免除する書き方は、1項の無効の対象になり得ますし、1項の適用がない場合でも、消費者契約法10条(消費者の権利を制限し、義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とする)の評価が残ります。
民法566条の1年の期間制限は、任意規定であり、当事者の合意で短くすること自体は可能です。しかし、消費者との契約で、期間を著しく短くし、かつ売主の悪意・重過失の場合まで一律に責任を免れるとする書き方は、民法572条(知りながら告げなかった事実については、担保責任を負わない特約をしても責任を免れることができない)との関係でも、そのまま通らない部分が出ます。
出品者と購入者がともに事業者(商人)の売買では、商法526条が適用されます。買主は、売買の目的物を受領したときは、遅滞なくその物を検査しなければならず、種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主にその旨の通知を発しなければ、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除ができません。また、直ちに発見できない不適合を、買主が6か月以内に発見したときも同様です(同条2項)。ただし、売主が悪意の場合は、この規定は適用されません(同条3項)。事業者間の売買を主とするサービスでは、この規定を前提に、検査と通知の期間を規約に書くことが、実務では行われています。
書き方の例(一般的な例) 受領後の申出と免責の条文
期間経過による免責
理由期間経過で一切の責任を免除する書き方を避け、申出の期間が過ぎた場合の効果と、除外する場合を書く。購入者が消費者のときの扱いを分ける。
起算点
理由受領時でなく、不適合を知った時を起算点にすると、民法566条と整合する。受付の上限を設ける場合は、「受け付けないことがある」にとどめ、責任そのものを免除しない。
事業者間の取引
理由商法526条は、商人間の売買に適用される。事業者間の取引を想定するサービスでは、検査と通知の義務を分けて書く。
返品・返金ポリシーを出品者任せにして、記載がなければ返品不可とみなす書き方
返品・返金の条件を、出品者が個別に定めることとし、出品者が商品の出品時に条件を明示しなければ、返品不可・返金不可とみなす、という書き方があります。出品者ごとに商品の性質も事情も違うため、運営者が一律の条件を定めず、出品者に委ねるという考え方自体は、成り立ちます。ただし、この書き方には、二つの注意点があります。
一つ目は、特定商取引法15条の3との関係です。出品者が販売業者に当たる場合、通信販売をする販売業者が広告をした商品の売買契約の申込みを受けたとき、その申込みをした者や購入者は、商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、申込みの撤回または契約の解除を行うことができます(同条1項本文)。ただし、販売業者が申込みの撤回等についての特約を広告に表示していた場合には、この限りではありません(同項ただし書)。電子消費者契約に当たる場合は、広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であって主務省令で定める方法により表示していることが求められます。つまり、販売業者が返品不可の特約を有効にするには、販売業者自身が、定められた方法で表示する必要があります。申込みの撤回等があったときの返送の費用は、購入者の負担です(同条2項)。
運営者の規約に、「出品者が返品の条件を明示しなければ、返品不可とみなす」と書いても、それだけで、出品者が返品不可の特約を広告に表示したことにはならない可能性があります。この場合に、購入者の撤回等の権利がどう扱われるかは、条文と消費者庁の資料で確認が必要です。実務では、運営者が出品の入力画面に「返品の可否」の入力欄を設け、事業者の出品者に必須入力とし、表示欄に表示される設計にして、規約の定めと表示を結びつけています。
二つ目は、購入者が個人で、出品者も個人の場合です。出品者が事業者でなければ、特定商取引法15条の3は適用されず、消費者契約法も、事業者と消費者の契約ではないため、出品者と購入者の間の売買契約には直接適用されません。この場合、返品の可否は、民法の契約不適合責任(562条以下)と、当事者の合意で決まります。ただし、運営者と購入者の間の購入者規約は、運営者が事業者、購入者が消費者の契約なので、消費者契約法の規律を受けます。規約の中で、購入者が返品を求める権利を過度に制限する条項は、この観点から評価されます。
書き方の例(一般的な例) 返品・返金の条文
出品者任せの書き方
理由「記載がなければ返品不可」とみなす書き方を避け、標準の条件を運営者が持つ。不適合のときの権利は制限しないことを明記する。
購入者都合の返品
理由購入者都合の返品を一律に拒むのではなく、出品者の表示に結びつける。出品者が販売業者のときは法定の規律に従う旨を書く。
返送の費用
理由弁済の費用は債務者の負担が原則(民法485条)。不適合は出品者の債務不履行の問題なので出品者負担とし、都合返品は購入者負担と分ける。
返送の費用の分担は、民法485条が基準になります。弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担とされます。商品に不適合があって出品者が追完や返金に応じる場合、返品の送料は、債務の履行のためのものとして、出品者が負担するのが自然です。これに対し、購入者の都合による返品では、購入者が撤回を求めるものなので、返送の費用は購入者が負担します。特定商取引法15条の3第2項も、申込みの撤回等があった場合の引取りや返還に要する費用は、購入者の負担としています。
運営者が決める枠組み:申出から返金までの手順を、期間とお金の流れで書く
ここまでの整理を、運営者が規約とガイドラインに書く枠組みに落とすと、申出、調査、解決、返金の4つの手順になります。この4つに、期間とお金の流れを結びつけて書いておくと、現場の判断がぶれません。
申出から返金までの手順と、書くこと
| 手順 | 運営者が決めること | 書き方のポイント | 関連する論点 |
|---|---|---|---|
| 申出 | 申出の窓口、申出ができる期間、必要な資料(写真、追跡番号、やり取りの記録) | 期間は、不着と不適合で別に定める。起算点を明確に書く | 期間を短くしすぎると、民法566条や消費者契約法10条の評価を受ける |
| 調査 | 運営者が調べる範囲、出品者への照会の期限、購入者への追加資料の依頼 | 運営者の調査は、当事者の協議を促す補助であり、事実を確定する権限ではないと書く | 運営者の判断が拘束力のある裁定かの問題は、紛争対応のページで整理する |
| 解決の方法 | 出品者が選べる対応(交換、修理、一部返金、全額返金)、購入者の同意の取り方 | 出品者が応じない場合の運営者の動き(出品者規約の措置)を書く | 出品者が応じない場合は、購入者が売買契約の当事者として請求できる |
| 返金 | 返金の経路(決済手段への返金、売上金からの控除)、返金の時期、手数料の扱い | 返金は購入者が支払った方法に戻すことを原則とする | 手数料や決済手数料の戻し方は、手数料の設計のページで整理する |
返品・返金の枠組みを点検するリスト
- 配送中の事故と、契約不適合の問題を、別の条項に分け、それぞれの申出の期間と手順を書いた。
- 商品が購入者に引き渡されるまでの事故は出品者の負担とし、運送業者に預けた時を引渡しとみなす書き方を避けた。
- 受取確認の操作と自動確認が、契約不適合の権利を放棄する意思表示でないことを明記した。
- 契約不適合の申出の起算点を、不適合を知った時とし、民法566条の期間を不当に短縮していない。
- 「申出がなければ責任を負わない」という書き方を、購入者が消費者の場合の消費者契約法8条・10条の観点から見直した。
- 出品者が販売業者のときの特定商取引法15条の3の返品特約の表示を、出品の入力画面で表示できる設計にした。
- 返送の費用の分担(不適合は出品者、都合返品は購入者)と、返金の経路を書いた。
- 出品者が応じないときの運営者の動きと、購入者が自ら請求できることの案内を決めた。
出品者が返金に応じず、購入者との協議が整わないときに、運営者が裁定するか、仲裁の合意とするかという論点は、取引トラブルになったとき・よくある質問のページで整理します。ここでは、運営者の関与が補助にとどまるのか、判断まで及ぶのかを、規約の文言で明確にしておくことが大切だという点だけを押さえておきます。
起きがちなこと:配送事故と契約不適合が混ざり、責任の線が引かれていない
最後に、返品・返金の枠組みで起きがちなことを、型としてまとめます。特定のサービスの話ではなく、点検の場面でよく見られる傾向です。
起きがちなこと
- 配送中の紛失・破損と、説明と違う商品の問題を一つの条項に混ぜ、申出の期間や手順が不明確になる。
- 運送業者に預けた時に危険が移転すると書き、購入者が消費者のときに、消費者契約法10条の評価を受ける。
- 受取確認の操作をすると、一切の申出ができなくなると読める規約になっており、契約不適合の権利との関係が整理されていない。
- 「受領後一定期間内に異議がなければ責任を負わない」とし、期間の起算点が受領時で、不適合を知った時でない。
- 返品・返金を出品者に任せ、記載がなければ返品不可とみなすと書いたのに、出品の入力画面に返品の可否の入力欄がない。
- 出品者が販売業者のときの特定商取引法15条の3の規律を意識せず、一律に返品不可としている。
- 返金の経路や時期が書かれておらず、返金が決済手段に戻るのか、売上金から控除されるのかが分からない。
- 運営者の調査と判断が、補助にとどまるのか、拘束力のある裁定なのかが書かれておらず、責任を問われる場面で説明に困る。
返品・返金の枠組みが整ったら、購入者規約の成立とキャンセルの条項、出品者規約の発送と措置の条項、手数料と精算の定めを並べて、期間と手順が同じ内容でつながっているかを確かめます。
よくあるご質問
商品が配送中に壊れた場合、誰が損害を負担しますか。
民法の考え方では、商品が購入者に引き渡される前の事故は、原則として出品者の負担です。引渡しの後に当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷したときは、購入者が負担します(民法567条1項)。規約で運送業者に預けた時を引渡しとみなす書き方もありますが、購入者が消費者のときは消費者契約法10条の評価を受けるため、運営者は、購入者に届くまでの事故は出品者の負担とする書き方を基本にするのが整っています。
受取確認の操作をしたら、その後は商品の不具合を申し出られませんか。
受取確認は、商品が届いたことを運営者に知らせ、出品者の売上金を確定させるための手続です。契約不適合の責任の追及は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知すれば可能です(民法566条)。受取確認の操作が、この権利の放棄ではないことを、規約に明記しておくのが望ましく、操作をしたら一切の申出ができなくなると読める規約は、消費者契約法10条の評価を受けるおそれがあります。
「受領後一定期間内に申し出がなければ責任を負わない」と書くのは有効ですか。
購入者が個人で出品者が事業者の場合は、消費者契約法8条と10条の評価が要ります。追完も代金減額も認めないまま期間の経過だけで責任を免除する書き方は、無効とされるおそれがあります。民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実は、特約があっても責任を免れません。事業者間の売買には商法526条が適用され、検査と通知の期間に別の定めがあります。取引の当事者の区分に応じて書き分けます。
返品の条件を出品者に任せ、記載がなければ返品不可とみなす規約は問題ですか。
出品者が販売業者に当たる場合、特定商取引法15条の3により、広告に返品の特約を表示していないと、商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまで申込みの撤回等ができます。運営者の規約に「記載がなければ返品不可」と書いただけでは、出品者が特約を表示したことにならない可能性があるため、出品の入力画面に返品の可否の入力欄を設けるなど、表示と結びつける設計が整っています。個別の当てはめは、条文と消費者庁の資料で確認が必要です。
商品に不具合があったとき、返品の送料は誰が負担しますか。
弁済の費用は、別段の意思表示がなければ債務者の負担です(民法485条)。商品の不適合に対して出品者が追完や返金に応じる場合の返送の費用は、出品者が負担するのが自然です。購入者の都合による返品の返送の費用は購入者の負担とし、出品者が販売業者のときの申込みの撤回等の費用は、購入者の負担とされています(特定商取引法15条の3第2項)。規約では、この二つを分けて書きます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別のサービスへの当てはめは、取引の仕組みや利用者との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 金融庁 / 警察庁 / 経済産業省