購入者規約の作り方:契約の成立時点・購入後のキャンセル・禁止行為・未払い

購入者規約の軸は、売買契約がいつ成立するかです。成立の時点を決めたうえで、購入手続の画面、購入後のキャンセル、購入者の禁止行為、代金の未払いと遅延損害金の扱いを、その時点を軸に並べます。

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成立の時点を「運営者が代金の支払の完了を確認した時」と書くと、運営者は当事者にならないという冒頭の条項と矛盾し、運営者が契約の成否を握っているように読めます。

このページの要点

  • 成立の時点は、購入手続の完了、決済の承認、出品者の承諾のいずれかに置く。運営者の確認ではなく、客観的な出来事と通知の記録に結びつける。
  • 購入手続の画面は、押すと申込みになることが分かる文言と、総額・引渡時期・返品の扱いの最終確認が要る。電子消費者契約法3条と特定商取引法12条の6を意識する。
  • 購入者都合のキャンセルは、成立前、発送前、発送後、受領後に分ける。通信販売に法定のクーリング・オフはなく、高額のキャンセル料は消費者契約法9条1項1号の対象になる。
  • 遅延損害金は購入者が消費者のとき年14.6パーセントが上限(消費者契約法9条1項2号)。購入者規約は購入前に見える位置に置き、出品者の個別条件も見える位置に表示する。

結論:購入者規約は、契約の成立時点を先に決め、キャンセルと禁止行為と未払いを、その時点を軸に並べる

購入者規約は、購入する人に向けた約束事をまとめた条項のまとまりです。出品者規約が「出品という行為」の約束だとすれば、購入者規約は「購入という行為」の約束で、購入の流れ、契約の成立、購入後のキャンセル、購入者の禁止行為、代金の未払いの扱いが柱になります。このうち、他のすべての条項の軸になるのが、売買契約がいつ成立するのかという点です。成立の前なら申込みの撤回の問題、成立の後なら契約の解除や返品の問題、というように、成立の時点で、法的な扱いが変わるからです。

成立の時点は、規約に明示しておかないと、後から争いになります。購入ボタンを押した時なのか、決済が承認された時なのか、出品者が承諾した時なのか。運営者が代金の支払を確認した時としている規約もありますが、その書き方は、運営者が契約の成否を握っているように読めるため、運営者は取引の当事者でないという別の条項との整合に注意が要ります。

  • 契約の成立時点は、購入手続の完了、決済の承認、出品者の承諾のいずれに置くかを決め、運営者の判断ではなく客観的な出来事に結びつけて書く。
  • 購入手続の画面は、申込みになることと、内容を確認できることが分かる表示にする。電子消費者契約法3条の確認措置と、特定商取引法12条の6の表示を意識する。
  • 購入者都合のキャンセルは、成立前と成立後、発送前と発送後、受領後に分け、契約を解除できる場合と、出品者の承諾が要る場合を分けて書く。
  • 購入者の禁止行為は、虚偽の注文、なりすまし、支払の回避、虚偽の返品の申出、評価の操作などに整理し、措置とつなげる。
  • 代金の未払いは、期限、決済エラーの扱い、遅延損害金の上限(購入者が消費者の場合)を決める。購入者規約は、購入前に見える位置に置く。

このページは、購入者規約の骨格に絞ります。出品者側の義務は出品者規約の作り方、商品が届かない、壊れていた、説明と違うといった場面の責任分担と返品・返金は不着・破損・説明と違う商品のページで扱います。

契約はいつ成立するか:三つの置き方と、それぞれの注意点

民法522条1項は、契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して、相手方が承諾をしたときに成立する、と定めています。同条2項は、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない、とも定めます。利用者間の取引に当てはめると、出品者の出品、購入者の購入手続、運営者の決済の確認、出品者の発送の準備といった一連の出来事の中のどこで、申込みと承諾がそろったと扱うかを、規約で決めることになります。

出品の情報を、申込みの誘引(相手方に申込みをさせるための呼びかけ)と見るのか、それとも、購入者の購入手続に対する承諾を予定した申込みと見るのかは、取引の設計で見方が分かれ得る論点です。そのため、規約には、どの時点で売買契約が成立するのかを、明確に書いておく必要があります。多くの規約で見られる傾向として、成立の時点の置き方は、次の三つに整理できます。

成立の時点の三つの置き方

購入手続の完了時

購入者が購入ボタンを押して手続を完了した時に成立

  • 固定価格で、在庫が1点か、十分にある商品に向く
  • 出品者の承諾を事前に包括的に得ておく設計(出品=購入手続への承諾)
  • 成立が早いため、在庫なし、価格の誤りなどの例外の手当てが必要

決済の承認時

購入者の支払が決済代行事業者などで承認された時に成立

  • 代金の確保と成立が結びつき、未払いの問題が小さくなる
  • 決済の失敗や承認の遅れがあるときの扱いを書く必要がある
  • 承認の確認を運営者の判断にかけない書き方が要る

出品者の承諾時

購入者の購入申込みに対して、出品者が承諾した時に成立

  • 個別の事情がある商品、受注生産、役務の依頼に向く
  • 出品者が承諾しない場合、承諾の期限、申込みの失効の扱いを書く
  • 承諾までの間、購入者は代金を預けるのかの設計と関わる

どの置き方でも、成立の時点を、利用者が購入手続の画面で確認できる位置に表示し、完了の通知を送ります。意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じるとされています(民法97条1項)。完了の通知がいつ購入者に届いたかが、記録に残る設計にしておきます。

三つの置き方のうち、物品の売買型で最も多く見られるのは、購入手続の完了と決済の承認を組み合わせた置き方です。購入者が購入手続を行い、決済が承認された時に、購入者と出品者の間に売買契約が成立するとし、成立後は、出品者が発送の準備を始めます。この書き方は、運営者の判断を介さずに、客観的な出来事(購入手続と決済の承認)で成立を定めているため、運営者が当事者でないという立場と整合しやすいものです。

書き方の例(一般的な例) 成立の時点の条文

成立の置き方

よくある書き方購入者が代金を支払い、運営者が支払の完了を確認した時に、売買契約が成立する。
整えた書き方購入者が購入手続を完了し、決済が承認された時に、購入者と出品者の間に売買契約が成立する。決済の承認は、決済代行事業者が通知する結果による。

理由運営者の「確認」を成立の条件にすると、運営者が成否を握ると読める。客観的な出来事と、通知の主体を書く。

例外の扱い

よくある書き方成立後も、運営者が必要と認めるときは、取引を取り消すことができる。
整えた書き方売買契約が成立した後でも、商品の在庫がないこと、価格の表示に明らかな誤りがあったこと、第◯条の禁止行為があったことが判明したときは、運営者または出品者は、購入者に通知して、売買契約を解除することができる。解除したときは、既に支払われた代金は購入者に返される。

理由解除の事由を列挙し、返金を書く。「必要と認めるとき」だけでは、基準の不明確さが争いの種になる。

当事者性との整合

よくある書き方運営者は、売買契約の当事者にならない。購入者は、売買契約の成立について、運営者が確認した時点を基準とすることに同意する。
整えた書き方運営者は、売買契約の当事者にならない。売買契約は、購入者と出品者との間に成立する。

理由成立の基準に運営者の確認を持ち込むと、冒頭の当事者性の条項と矛盾する。矛盾する文言を残さない。

購入手続の画面で守ること:確認の機会と、申込みになることの表示

契約の成立を定めても、購入手続の画面が、購入者が申込みをしていることを理解できる作りでなければ、後から「押すつもりはなかった」「そんな内容とは思わなかった」という争いが生じます。購入手続の画面については、二つの法律の規定を意識する必要があります。

一つは、電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(電子消費者契約法)です。同法3条は、消費者が行う電子消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示について、その意思表示が、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(民法95条1項1号)に基づくもので、その錯誤が重要なものであり、かつ、送信した時に申込みの意思がなかったとき、または申込みの内容と異なる内容の意思表示を行う意思があったときは、民法95条3項(表意者に重大な過失があるときの取消しの制限)を適用しない、と定めています。つまり、操作ミスによる申込みについて、消費者が重大な過失で取消しできないという扱いにならない、ということです。ただし、事業者が、申込みの意思の有無について確認を求める措置を講じた場合などは、この特例は適用されません。

もう一つは、特定商取引法12条の6です。出品者が販売業者に当たり、通信販売をする場合、顧客が行う申込みを受ける画面には、商品の分量と、販売価格・送料、代金の支払の時期と方法、商品の引渡時期、申込みの撤回または解除に関する事項といった、同法11条1号から5号までの事項を表示しなければなりません(12条の6第1項)。また、その画面で、申込みになることについて人を誤認させる表示や、これらの事項について人を誤認させる表示をしてはならないとされています(同条2項)。出品者の義務ですが、申込みの画面を作るのは運営者なので、運営者は、出品者がこれらの事項を表示できる画面の設計にします。

購入手続の画面の流れと、各画面で守ること

  1. 商品の画面価格、送料、発送までの日数、商品の状態、返品の扱いを表示する。出品者が販売業者に当たるときは、特定商取引法の表示を見られる位置に置く。
  2. 購入手続の入口購入者の配送先、支払方法を入力する。購入者規約と共通の利用規約を、この画面から確認できるようにする。
  3. 最終確認画面商品名、数量、総額(価格+送料)、支払の時期と方法、引渡時期、返品の扱いを、一画面で再表示する。購入ボタンの文言は、申込みになることが分かるもの(「購入を確定する」など)にする。
  4. 確認の措置最終確認画面で、内容を確認して購入を確定する意思を再確認する。誤操作の訂正や取消しの機会を設ける。
  5. 完了の通知成立した旨と、取引の内容、成立の時点を、画面とメールで通知する。通知の記録を残す。

最終確認画面の表示と、購入者規約の内容が食い違わないようにします。とくに、返品の扱いは、商品の画面、最終確認画面、規約で同じ内容にします。

最終確認画面は、申込みの内容を再確認する場であり、電子消費者契約法3条ただし書にいう、申込みの意思の有無について確認を求める措置にも当たり得ます。購入ボタンを1回押すだけで成立する設計(ワンクリック購入)にする場合は、誤操作を防ぐ別の仕組み(購入後の短い取消しの時間を設ける、など)を考えることが、実務では行われています。ただし、確認措置を講じたかどうかや、画面の表示が特定商取引法12条の6に適合しているかは、画面の個別の作りによって判断されるため、条文と消費者庁の資料で確認が必要です。

確認の問いと理由購入手続の画面を確かめる問い

  1. 購入ボタンの文言は、押すと申込みになることが分かるか。

    「次へ」「確認」など、申込みになることが分からない文言は、特定商取引法12条の6第2項1号の誤認表示の指摘を受けやすい。

  2. 総額と引渡時期、返品の扱いは、最終確認画面に表示されているか。

    特定商取引法12条の6第1項は、申込み画面に11条1号から5号の事項の表示を求める。

  3. 誤って押したときに、訂正や取消しができる機会があるか。

    電子消費者契約法3条は、確認を求める措置を講じていない場合に、操作ミスの錯誤について取消しを認める。

  4. 成立の通知の記録は、残っているか。

    意思表示は到達した時に効力を生じる(民法97条1項)。通知の記録は、成立の時点の証拠になる。

購入後のキャンセル:時点別に、できること・できないことを分ける

売買契約が成立した後、購入者の都合で取引をやめたいという申出は、起きやすいものです。気が変わった、同じ商品を他で見つけた、間違って購入した、といった理由です。購入者規約には、このときの扱いを書きます。基本の考え方として、契約が成立した後は、当事者の一方の都合だけで一方的に契約をやめることはできません。契約は、法律の定めか、当事者の合意(約定)による場合に解除でき(民法540条1項)、通信販売には、訪問販売などと違い、法定のクーリング・オフはありません。購入者が一方的に取り消せる場合があるのは、特定商取引法15条の3の返品の規定、消費者契約法による取消し、錯誤(民法95条)といった個別の規定がある場合です。

したがって、購入者都合のキャンセルは、規約で認めるかどうか、どの時点まで認めるか、費用をどうするかを決めます。時点で分けて整理すると、次のようになります。

時点別のキャンセルの扱い(書き方の例)

時点購入者都合のキャンセル書くこと注意点
契約成立前(購入手続の途中)購入手続を中止すれば足りる。契約は成立しない決済が承認される前の中断の扱い決済が承認されたのに成立の通知が届かない場合の扱いを書く
契約成立後、発送前出品者の承諾があれば、合意により解除できる。運営者が申請の受付窓口になる設計もある申請の方法、出品者が承諾する期限、承諾があったときの返金出品者が承諾しない場合の扱い。承諾がない限り解除できない旨を書くのが通常
発送後、受領前原則としてキャンセルできない。受領後の返品の扱いに従う返品の扱いは別の条項に委ねる配送中の商品を取り戻す手順が現実的でないことを書く
受領後キャンセルではなく返品の問題として扱う返品の可否は、出品者が示す条件による。出品者が販売業者のとき、特定商取引法15条の3の規律がある詳細は返品・返金のページに送る

購入者都合のキャンセルを認める場合に、キャンセル料や手数料の扱いを定めることもあります。たとえば、成立後のキャンセルで、運営者が受け取った手数料や決済手数料を返さない、出品者が負担した準備の費用をキャンセル料として購入者が負担する、といった定めです。購入者が消費者の場合、契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する条項や違約金を定める条項は、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効です(消費者契約法9条1項1号)。キャンセル料を定めるときは、実際に生じる費用の範囲に収め、金額の根拠を説明できるようにしておきます。

なお、運営者の手数料の扱いは、手数料の設計と規約への書き方のページで整理します。購入者がキャンセルしたとき、運営者の手数料を返すか、決済代行事業者の手数料を購入者または出品者が負担するかは、規約に明記しておかないと、精算の際に争いになります。

購入者の禁止行為:何を禁じ、どう措置につなげるか

購入者規約には、購入者の禁止行為を書きます。出品者の禁止行為と違い、購入者の禁止行為は、取引の相手方と運営者の双方に向けた行為が混ざります。整理すると、次のようになります。

購入者の禁止行為の整理

類型具体的な行為書き方のポイント
支払に関する行為代金の不払い、決済の不正な取消し(チャージバックの濫用)、他人の決済手段の無断使用禁止だけでなく、発覚したときの措置(取引の解除、アカウントの停止、関係機関への通報)を書く
なりすまし・虚偽他人になりすました購入、虚偽の配送先、購入目的のない虚偽の注文登録情報の正確性の保証と一体で書く。本人確認の方法は、別のページで整理する
購入後の不正商品を受け取っていないとする虚偽の申出、使用後の虚偽の返品の申出、説明と違うという虚偽の主張虚偽の申出と、正当な申出の線引きを書く。正当な申出まで萎縮させない
転売の制限出品者または運営者が転売を禁じた商品の転売「出品者が禁止している場合」に限る書き方にして、禁止の表示が商品の画面にあることを前提にする
評価・レビュー虚偽の高評価・低評価、出品者と通謀した評価の操作評価の機能の目的と、操作が禁止されることを書き、措置をつなげる
場の運営の妨害出品者や運営者への過度な要求、嫌がらせ、システムへの不正なアクセス共通の利用規約の禁止事項と重ならないよう、購入者に固有のものに絞る
場の外での取引連絡先を聞き出して場の外で取引することを持ちかける行為直接取引の禁止と違約金の書き方は、別のページで整理する

虚偽の申出の禁止は、購入者規約の中でも書き方が難しい部分です。商品が届いていないという申出や、説明と違うという申出は、正当な場合が大多数であり、虚偽の疑いを理由に申出そのものを抑えるような書き方は、購入者の信頼を損ないます。一方で、使用後の商品を返品して返金を受ける、受け取ったのに受け取っていないと主張するといった不正は、出品者に損害を与えます。規約には、「虚偽の申出をしてはならない」と書くだけでなく、申出を受けた運営者が、取引の記録、写真、追跡情報などの資料を求め、資料に応じないときは申出を認めないことがあること、虚偽と判断した場合は、アカウントの停止などの措置をとることがあることを、手順として書いておきます。

転売の制限は、注意が要ります。商品を購入して転売する行為そのものは、一般には法律で禁止されていません。購入者規約で禁止できるのは、出品者が転売を禁止すると商品の画面に表示している場合など、売買契約の内容として購入者が約束した範囲に限られます。この点を飛ばして、一律に「転売目的の購入を禁止する」と書くと、出品者が望んでいない場面でも運営者が購入者を制限することになり、運営者と出品者、購入者の関係が複雑になります。特定の興行の入場券のように、法律で転売が規制される類型は、禁止出品物ガイドラインの側で扱います。

代金の未払い・決済エラー・遅延損害金

購入者の代金の支払は、購入者規約の中心的な義務です。売買は、売主が財産権を移転することを約し、買主がその代金を支払うことを約することによって効力を生じ(民法555条)、売買の目的物の引渡しと代金の支払は、同時履行の関係に立つのが原則です(民法533条)。利用者間の取引では、決済代行事業者を通じた先払い(購入手続と同時に支払う)が主流なので、代金が支払われないまま商品が発送される場面は、あまりありません。それでも、決済エラー、与信の拒否、支払期限の経過、分割払いやコンビニ払いなど後払いに近い支払方法では、未払いの問題が生じます。

決済が完了しないときの扱い(書き方の例)

  1. 決済エラー決済が承認されない場合、購入手続は完了せず、売買契約は成立しない。購入者は、別の支払方法で再度の手続を行える。
  2. 支払期限(後払いに近い支払方法)支払方法ごとの支払期限を表示する。期限までに支払がないときは、運営者または出品者は、購入者に通知して、売買契約を解除できる。
  3. 催告期限を過ぎたとき、運営者は、購入者に支払を促す通知をする。相当の期間を定めて催告する。
  4. 解除催告の期間内に支払がないときは、売買契約を解除する(民法541条)。購入者は、出品者や運営者に生じた損害を負担する。
  5. 措置未払いが繰り返される場合は、アカウントの停止、購入できる商品の制限などの措置を行う。

決済エラーで成立しなかった取引と、成立後に支払が滞った取引は、扱いが違うので、条項を分けて書きます。

支払が遅れたときの遅延損害金は、規約で定める場合があります。金銭の給付を目的とする債務の不履行についての損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定められ、約定の利率が法定利率を超えるときは約定の利率によります(民法419条1項)。法定利率は年3パーセントとされ、3年を1期として変動します(民法404条2項・3項)。債権者は損害の証明をする必要がなく(民法419条2項)、債務者は不可抗力を抗弁とすることもできません(同条3項)。

購入者が消費者のときは、遅延損害金の約定に上限があります。消費者契約に基づき支払うべき金銭を、消費者が支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項は、支払期日の翌日から支払う日までの期間について、その日数に応じ、支払うべき額に年14.6パーセントの割合を乗じた額を超える部分が、無効となります(消費者契約法9条1項2号)。規約に遅延損害金の率を書くときは、購入者が消費者に当たる場合を想定して、この上限を超えない率にします。上限を超える率を定めると、超える部分は無効となり、条項全体の信頼性に疑問を持たれます。

条文例代金の支払と未払い(書き方の例)

  1. 購入者は、購入手続において選択した支払方法により、代金(販売価格と送料の合計額)を支払わなければならない。
  2. 支払方法ごとに定められた期限までに代金が支払われないときは、運営者または出品者は、購入者に通知して、売買契約を解除することができる。
  3. 購入者が支払期日までに代金を支払わないときは、購入者は、支払期日の翌日から支払済みまで、年◯パーセント(購入者が消費者の場合は、年14.6パーセントを超えない割合)の割合による遅延損害金を支払う。
  4. 決済の承認が得られなかったとき、売買契約は成立せず、運営者および出品者は、購入者に対して責任を負わない。

遅延損害金の率は、サービスの運用に合わせて「年◯パーセント」と伏せて設計します。購入者が消費者の場合の上限は、消費者契約法9条1項2号によります。

購入者規約を購入前に見せる位置と、同意の取り方

購入者規約は、購入者がその内容を見られる状態にしてはじめて、契約の内容になります。利用規約が契約の内容になる要件は、民法の定型約款の規定(548条の2第1項)によります(サービス全体の地図のページで整理しています)。購入者規約について、これを実現するには、購入者が購入手続に進む前に、規約が契約の内容になることが分かる表示があり、規約の全文を見られる導線があることが要ります。

購入者規約は、会員登録のときに共通の利用規約とあわせて同意を得るのが一般的です。登録後に購入者規約が追加されたり、変更されたりした場合は、民法548条の4の変更の手続(効力発生時期を定めた周知)を踏みます。購入手続の画面でも、購入者規約へのリンクを表示し、とくに購入者に関わる重要な事項(キャンセルの扱い、返品の扱い、未払いの扱い)は、規約の全文とは別に、画面の中で分かるように要約を表示する設計が、実務ではよく使われています。

出品者が個別に定める条件(返品の条件、発送までの日数など)は、購入者規約の外に置かれることが多いのですが、この場合、購入者が購入前に確認できる位置に表示されていることが要ります。購入者規約に、「返品の条件は、出品者が別に定める規定による」と書いたのに、出品者の規定が商品の画面のどこにも表示されていなければ、購入者は条件を知らないまま購入することになり、規約の効力が争われます。出品者の個別の条件の表示は、出品者規約で、出品者の義務として書いておきます。

確認の問いと理由購入者規約の周知と同意を確かめる問い

  1. 購入手続の前に、購入者規約の全文を見られる導線があるか。

    規約を契約の内容とする旨の表示と、確認できる状態が、民法548条の2の基礎になる。

  2. 購入者に不利益な条項(キャンセル不可、返品不可、遅延損害金)は、画面の中で要約されているか。

    見えにくい位置の不利益な条項は、民法548条の2第2項(信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は合意しなかったものとみなす)や消費者契約法10条の評価を受けやすい。

  3. 出品者が定める返品の条件は、商品の画面に表示されているか。

    規約が出品者の規定を引用するなら、購入者が購入前に確認できることが前提になる。

  4. 未成年者が購入する場合の扱いを決めたか。

    未成年者が法定代理人の同意なしにした契約は取り消し得る(民法5条2項)。年齢確認と未成年者の利用は、別のページで整理する。

  5. 購入者が事業者の場合の扱いを決めたか。

    購入者が事業者の場合は、消費者契約法の規律の適用が変わる。事業者だけが購入する場合は、特定商取引法26条1項1号の適用除外の余地もある。

購入者が未成年者のときの扱いは、購入者規約の中で、軽く触れるにとどめるのが通常です。民法5条1項は、未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が必要と定め、同意のない契約は取り消すことができます(同条2項)。年齢の確認、未成年者の利用の可否、法定代理人の同意の取り方は、登録時の年齢確認・本人確認・未成年者の利用のページで整理します。

起きがちなこと:成立の時点と、キャンセル・未払いの定めがばらばらになる

最後に、購入者規約で起きがちなことを、型としてまとめます。特定のサービスの話ではなく、購入者向けの規約を点検する場面で、よく見られる傾向です。

起きがちなこと

  • 成立の時点を「運営者が支払の完了を確認した時」とし、冒頭の「運営者は当事者にならない」という条項と矛盾する。
  • 購入後のキャンセルを一律に「できない」と書き、出品者の承諾があるときの扱いや、運営者の受付の手順が書かれていない。
  • 購入手続の画面の購入ボタンの文言が、申込みになることを示しておらず、最終確認画面に総額や返品の扱いが表示されていない。
  • 返品・返金の条件を「出品者が別に定める」とし、出品者の規定が購入前に見える位置に表示されていない。
  • 転売を一律に禁止すると書き、出品者が許している取引まで制限してしまう。
  • 遅延損害金の率を高く定め、購入者が消費者の場合の上限(年14.6パーセント)を超えた部分が無効になる。
  • 購入者の禁止行為の列挙が、共通の利用規約の禁止事項と重なっており、変更したとき、どちらが優先するのか分からなくなる。
  • 購入者規約を登録後に追加または変更したのに、効力発生時期を定めた周知を行っていない。

購入者規約を整えたら、商品の画面、最終確認画面、完了の通知、規約の4つを並べて、成立の時点、返品の扱い、キャンセルの扱いが同じ内容になっているかを確かめます。画面と規約がずれていると、規約の文言がどれほど整っていても、利用者が見た画面の内容が優先される場面が生じます。

よくあるご質問

売買契約は、購入ボタンを押した時に成立すると書いてよいですか。

書けます。民法522条は、申込みに対して相手方が承諾をした時に契約が成立すると定めるだけで、成立の時点を規約で定めることは妨げられません。ただし、在庫がない、価格の表示に明らかな誤りがあるといった例外の場合に、売買契約を解除できる条項を併せて書いておく必要があります。また、成立の通知を購入者に届け、記録を残します。

購入後に購入者が気が変わったとき、キャンセルを認めなければなりませんか。

法律上、通信販売に訪問販売のようなクーリング・オフの制度はありません。契約が成立した後の購入者都合のキャンセルは、規約で認めるか、出品者の承諾を条件にするかを、運営者が設計します。購入者が消費者のときに高額なキャンセル料を定めると、消費者契約法9条1項1号により、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。

購入手続の画面で、気をつけるべき点は何ですか。

購入ボタンの文言が、押すと申込みになることを示していること、最終確認画面に総額、支払の時期と方法、引渡時期、返品の扱いが表示されていること、誤操作の訂正や取消しの機会があることです。出品者が販売業者のときは特定商取引法12条の6、購入者が消費者のときは電子消費者契約法3条が関わります。個別の画面への当てはめは、条文と消費者庁の資料で確認が必要です。

代金の支払が遅れた購入者に、遅延損害金を請求できますか。

規約に定めがなくても、金銭債務の不履行には、法定利率による遅延損害金を請求できます(民法419条)。規約で率を定めることもできますが、購入者が消費者のときは、年14.6パーセントを超える部分が無効です(消費者契約法9条1項2号)。支払期日を明らかにし、購入者に通知する手順も、あわせて書いておきます。

購入者による転売を、規約で禁止できますか。

一律の禁止は慎重に考える必要があります。購入した商品の転売そのものは、一般には法律で禁止されていません。規約で禁止できるのは、出品者が転売を禁止すると商品の画面に表示し、購入者がそれを前提に購入した場合など、売買契約の内容として約束した範囲に限られます。法律で転売が規制される類型は、禁止出品物の整理の中で扱います。

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本ページは一般的な情報提供です。個別のサービスへの当てはめは、取引の仕組みや利用者との合意の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 金融庁 / 警察庁 / 経済産業省

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